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2012年 04月 13日

第4回〜退蔵院ふすま絵プロジェクト〜

今年は春がなかなか顔を出さない。
西高東低の冬型の気圧配置がいつまで経っても主役を務め、これでもかと冷たい空気をふりまき、いつまで経っても寒さがやわらぐことがない。
ようやく春が顔を出したかな?と思うと、なかなかどいてくれない冬と喧嘩をして、大雨はもちろん、雹やみぞれや雪も降らせ、台風かと思う程の強風を巻き起こし、せっかく長い眠りから目覚めかけていた植物や動物の出鼻をくじくのである。
皆が春を待ちわびているのに、当の本人の春はどうやら恥ずかしがって顔を出さず、冬にまだ頑張ってもらっているようだ。
2012年4月6日の夜の京都はまるで2月のような寒さだった。

「今夜も冷えますね〜」

妙心寺退蔵院のふすま絵制作の現場に入ると、絵師の村林さんが寒そうな顔をして僕を出迎えてくれた。

「妙心寺退蔵院ふすま絵プロジェクト」の概要はこちら

絵師の村林由貴さんのHPはこちら


人の3倍寒がりな僕は(南国宮崎出身なので仕方ないが)

「さむいね〜」

と、この寒さに対して憎しみをこめて言いつつ、ふすまに目をやって驚いた。
ふすまが全面取り外され、畳に寝かせられていたのだ。

「お〜、すげ〜」

そのふすまは、先日撮影に訪れた時(前回のブログを参照)には鉛筆の下書きしかなかったのだが、今僕の目の前にあるそのふすまは鉛筆ではなく、墨で描かれているその真っ最中であった。
そこに描かれていたのはきゅうりやトマトなどの夏野菜だった。
地面を這いながらも天に向かって力強く伸びていくツルや、太陽の光を目一杯浴びようとして大きく広げた葉がふすまの中に生きていた。
生命力溢れる植物の命が見事にそこに在った。

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「墨で描いているだけなのに太陽の『光』が本当に当たっているみたい」
そう思わず言ってしまう程、ふすまに描かれているその夏野菜は夏の朝の柔らかな光を受け、朝露を滴らせながらキラキラとまぶしく輝いているかのようで、色を感じるのである。

「今まで水墨なんてやったことなかったんですが、描いていくうちに発見していくんですよ、墨のにじみ具合とか、濃淡の付け方とか。最近です、水墨ならではの表現ができ出して来たのは。もう、やっとこっからやなって感じです。」

そう言う村林さんの言葉通り、彼女の描く絵は明らかに2月の描き初めの頃のものとはどこか違う。
何と言うか、「線」に柔らかさと淡さがより一層出て来たのである。
それに伴って絵全体からは以前の華やかで豪華絢爛な絵とは違って、静かで落ち着いた雰囲気が漂っている。
それを村林さんは「主張しない主張」と言う。
前面にせり出してくるような派手な主張もあれば、静かでそっとさりげないそんな主張もあるというのだ。
そう言う様に、今描いている夏野菜の絵はみずみずしい生命力を静かに放ち、僕の心をそっと撫でる様に刺激してくるのだった。

そんな穏やかな気分でいると、村林さんは早速筆をとって制作開始。
濃淡様々な墨を並べ、ふすまに筆を走らせていく。
静寂の時間が流れる。
手は彼女のイメージを忠実に再現していき、次々と彼女の頭の中がふすまの上に露になっていく。牛歩のように少しずつ少しずつ、しかし確実に。
それが面白くて僕は夢中でシャッターを切る。
しかし村林さんの溢れる情熱と生命はまだまだ写真の中に定着させることができない。
なかなか手強い人である。
そんな僕の想いを尻目に村林さんは黙々と筆を動かし、自分の生命を描いている。

寒い4月の闇を溶かす様に村林さんの情熱は静かにほとばしり、夜を浸食していくのだった。


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by yoshida-akihito | 2012-04-13 00:12 | 退蔵院ふすま絵プロジェクト


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