News

ysdaki.exblog.jp
ブログトップ
2012年 09月 05日

第8回〜退蔵院ふすま絵プロジェクト 〜

a0236568_22594523.jpg

気温35度。体感温度40度。
雲一つない空には狂った様に太陽が燃え、容赦なく激しい光線を降り注いでいる。

「うわ〜、あっちい」

2012年8月8日。
夏真っ盛りのこの日、僕は妙心寺の石畳を歩きながら、村林さんの待つ寿聖院へ向かっていた。


退蔵院ふすま絵プロジェクトの概要について→http://painting.taizoin.com/j/
残り少ない命を激しく燃やすように至るところで蝉が精一杯鳴いている。
その声達を後ろにして、寿聖院の扉を開けた。

「あ〜、吉田さん、お久しぶりです〜。お元気してましたか」

そう言ってニッコリ笑って出迎えてくれた村林さん。
彼女と会うのは実に2ヵ月ぶりだった。

というのも、5月末から7月末までの2ヵ月間、僕がバングラデシュへ撮影に行っていたためだ。
久しぶりに会う彼女だが、何だか久しぶりという感覚があまりなく、まるで昨日も会っていたかの様に出だしからポンポンと会話が弾む。
2ヵ月前に僕がバングラデシュへ行く直前に会った時と変わりない、柔らかくて、それでいて強い意志を持ったその眼と表情を見て、絵を見ずとも、この2ヵ月間充実した時間を送ったのだろうなと感じた。
そしてそれは絵を見て、すぐに実感へと変わった。

2ヵ月ぶりに見る絵達は、当たり前だが2ヵ月前よりもずいぶんと描き進められ、なんと広間の襖10面全てが完成していたのである。

そこに描かれていたのは、夏と秋の光景だった。

夏の朝の光を受けて伸びやかにのびる蔓、朝露の滴る葉の上を歩く虫達、まるで掴めそうなぐらいたわわに実るぶどうの実、そこに遊びにやってきた鳥達、そして秋の光の作り出す陰影と濃淡。柔らかな風が体を包み、土と緑の匂いがしてくるようだ。
外で思いっ切り鳴いている蝉の声が妙にこの絵と合う。

「すごいねぇ、この2ヵ月間ほんとによく頑張ったんやね〜」

と言うと、

「ありがとうございます」

と満面の笑みの村林さん。
その笑顔を見ると、この2ヵ月間、彼女がどれだけ充実した時間を送ったかが分かるようだった。そして彼女の充実した時間はそのまま瑞々しく、「生きている」光景となって襖に描き出され、永遠の時間を留めているのだった。

a0236568_2301826.jpg


僕はそれを畳に座ってじっくり眺めた。
そして夏から秋へと移ろうその時間軸の中をゆったりと旅した。
その旅はなぜか僕の故郷である宮崎を思い出させた。
虫や鳥の鳴き声、風の感触、光の色、緑の匂い、そのどれもが故郷を感じさせ、寿聖院に居ながらにして僕は故郷宮崎の風を感じていたのである。
そのとき確かに、村林さんが描き出し、創り出したその絵は完全に村林さんの手を離れ、僕の想像力と一体となり、僕の心の中を旅していたのだ。
それは何とも心地よく、贅沢な時間だった。

ゆっくりと絵を堪能した後、僕は村林さんに2ヵ月ぶりにカメラを向け、襖絵の前で撮らせてもらった。
そこには今日みたいな暑い夏の日に似合う、何ともいい笑顔の芸術家が居た。

a0236568_2305956.jpg


(次回から新たな襖絵の制作レポートに入ります)

[PR]

by yoshida-akihito | 2012-09-05 23:02 | 退蔵院ふすま絵プロジェクト


<< 熱き南アジアの風      紫明小学校での授業報告 >>