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2013年 10月 25日

壽聖院編15 吉田亮人・撮影レポート「完成披露会と襖絵ツアー」

【はじめに】
絵師の村林由貴さんが先日、妙心寺・壽聖院本堂の襖絵を完成させました。
今回、妙心寺・壽聖院本堂の襖絵が完成するまでの半年間の軌跡を、僕と村林さんの両方向の視点から約20話に渡って交互連載の形でレポートしていきます。
そうすることで、襖絵制作の過程と舞台裏を多面的に深く知って頂けるのではないかと思っています。
また同時にプロジェクトに関わる多くの人達の想いと、それを受け取りながら成長していく村林さんの姿を感じて頂ければ嬉しいです。
今日は吉田亮人・撮影レポートから「完成披露会と襖絵ツアー」と題してお送りします。
是非多くの方にご覧頂き、プロジェクトの過程を辿りながら何かを感じて頂ければ幸いです。



吉田亮人・撮影レポート⑧「完成披露会と襖絵ツアー」


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2013年8月24日。
夕闇が辺りを包み、空がピンク色に染まり始めた頃、村林さんは慌ただしく動き回っていた。
これからたくさんの方をお迎えして完成お披露目会が行われるからだ。

つい今しがた出来上がったばかりの襖絵は夕刻の陽に照らし出されて、黄金色に輝いていた。
まだ人が来る前の静かなひととき、僕はその襖に描かれた稲穂と雀を眺めながら数時間前のことを反芻していた。

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披露会を前に慌ただしく準備する村林さん。



「いいと思います!」

その声が完成の合図だった。
「やった〜」と言わんばかりの満面の笑みを浮かべながら、出来上がったばかりの襖絵を愛でる様に眺める村林さん。その表情はまるで我が子を慈しむ母親の表情のようだった。
村林さんがこの襖絵を生み出すために登ってきた道のりを遠目で見てきた僕も人一倍嬉しかった。
それと同時に村林さんの手を離れたこの襖絵達がこれから多くの人の目に触れ、どんな感情をもたらすのだろうとも思った。
それは表現者として嬉しくもあり、怖いことでもある。
兎にも角にも、今夜多くの人が完成したばかりのこの襖絵達に会いにくる。
彼らがこの風景と出会った時、彼らの心にどんな風が吹くのだろう。
完成の余韻に浸る村林さんを眺めながらそんなことを思いつつ、完成直後に多くの人に見てもらえるこの襖絵達は何て幸せなんだろうと思った。



「おお!いいなあ!」
「素晴らしいですね」
「ようやったなあ!」

完成披露会に駆けつけた多くの人が、出来上がったばかりの襖絵と対面しそんな言葉を漏らした。
徹夜続きできっと体力的にはヘロヘロの村林さんも、駆けつけて下さった多くの方の想いに感謝しっぱなしの様子で、弾ける様ないい表情をしていた。

「いやぁ、ここ最近なかなか来れずに申し訳なかったんだけど、ほんといいのできたね。すごいよ」

と、ライターの近藤雄生さんが言う。 近藤さんはこれまで一緒に襖絵プロジェクトの取材を行ってきたライターさんだ。

「由貴ちゃん、また一つ階段を上ったね。いや、これほんといいね」

近藤さんも襖絵プロジェクトを長く見つめてきた者としてこの襖絵の完成にいたく感動しているようだった。
襖絵を前に近藤さんと二人で話していると、

「近藤さん、吉田さん、いつもお世話になっております。どうもありがとうございます。」

と僕達に声をかけて下さる二人がいた。
村林さんのご両親である。

「あ、どうも!この度はおめでとうございます」

ご両親とはこれまで何度かお会いしていて久しぶりの再会だった。
しかし村林さんの口からご両親のお話を度々聞いていたので、久しぶりに会ったのだけれど、久しぶりな感じがしなかった。

「大丈夫かなぁって心配してたんですけどね、皆さんに支えてもらったおかげです。ありがとうございます」

深々と頭を下げ、そう言うご両親。
しかし村林さんが完成まで漕ぎ着ける事ができたのは、多分にご両親の力が大きい。
村林さんの制作が佳境に入り、寝ずや食わずやの生活続きになった時、実家の兵庫からわざわざ差し入れを持ってきて、制作の邪魔になるといけないからと用件を済ませるとすぐに帰った話を村林さんから聞いたことがある。
その他にも何かとご両親の気遣いを感じるエピソードがいくつもある。

「あの子はやると決めたらやるんですけど、無理しすぎちゃうところもあるので」

そう言いながら、等身大の我が子の姿をしっかりと陰で見守りながら力添えをされるこのご両親の気遣いに感動するのだった。



「線がいいなあ。むらば、ええの描きよったなあ。」

退蔵院副住職松山大耕さんが感嘆の声を上げながら、襖絵を眺めている。

「おぉ、ほんまようやった。これやこれ。バッチリ、バッチリ」

現代美術家で京都造形大学学科長の椿昇先生も愛弟子の作品に労いの言葉をかけていた。

「あいつはな、やれ言うたらできよるんや。それはなかなかできるもんじゃない。やっぱあいつはそれだけの力持っとるし、それを活かすために練習を怠らへん。雀もどんだけ描くんやってぐらい描いてたやろ。こっちが言った以上の事をあいつはやりよるからなあ」

椿先生のこの言葉の中にこの襖絵が誕生した全ての要素が詰まっていると思う。
半年以上の時間をかけ、ひたすら練習に明け暮れた日々。
その日々が襖の中に立ち上がり、今多くの人の心の中に風を呼び起こしている。
僕はその風が吹く光景を眺めながら、村林さんの姿を見つめた。
黄金色の稲田を吹き抜ける、清々しくて心地良い風が村林さんを包んでいた。




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完成披露会は壽聖院住職・松山侑弘さんの説明から始まった。



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完成したばかりの襖絵を鑑賞する表具師の物部さん。プロジェクトで使用する襖は全て物部さんの仕事によるもの。



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「雀」や「カエル」など練習してきた長尺ロール紙を広げる椿昇先生。その左は表具師の物部さん。



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ロール紙と襖絵を村林さんの足。



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習作「雀」を鑑賞する。



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退蔵院副住職・松山大耕さん(右)と椿昇先生(左)



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(株)中里の中里会長ご夫婦と村林さん。村林さんが使用する「筆」は全て中里さんの会社で作ってもらっている。



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椿昇先生と村林さん。



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完成披露会が終わり、帰り際、椿先生とハイタッチ。「むらばようやった!」との椿先生の一言が響いた。



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完成披露会が終わり、皆さんを送り出した後、幸せそうな表情を浮かべる村林さん。




【襖絵ツアー】
8月25日から8日間連続で行われた襖絵ツアー。1日に3回、ツアー参加者の皆さんをお迎えして行われました。




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ツアー参加者に壽聖院の概要を説明する壽聖院住職・松山侑弘さん。



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ツアー参加者に壽聖院の庭の説明をする壽聖院住職・松山侑弘さん。



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壽聖院本堂の襖絵の説明をする村林さん。



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壽聖院書院の襖絵の案内をする村林さん。



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長尺ロール紙に描いた習作を鑑賞するツアー参加者の皆さん。



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8日間連続で、一日に3回行われた襖絵ツアー。この日のツアーが終わりホッと一息つく松山住職と村林さん。




明日は村林由貴・制作ノートから「完成披露会」をアップします。
お楽しみに。

これまでの「退蔵院ふすま絵プロジェクト撮影レポート」はこちらから


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by yoshida-akihito | 2013-10-25 12:02 | 退蔵院ふすま絵プロジェクト


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