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2013年 10月 26日

壽聖院編16 村林由貴・制作ノート「完成披露会」

【はじめに】
絵師の村林由貴さんが先日、妙心寺・壽聖院本堂の襖絵を完成させました。
今回、妙心寺・壽聖院本堂の襖絵が完成するまでの半年間の軌跡を、僕と村林さんの両方向の視点から約20話に渡って交互連載の形でレポートしていきます。
そうすることで、襖絵制作の過程と舞台裏を多面的に深く知って頂けるのではないかと思っています。
また同時にプロジェクトに関わる多くの人達の想いと、それを受け取りながら成長していく村林さんの姿を感じて頂ければ嬉しいです。
今日は村林由貴・制作ノートから「完成披露会」と題してお送りします。
是非多くの方にご覧頂き、プロジェクトの過程を辿りながら何かを感じて頂ければ幸いです。


村林由貴・制作ノート⑧

『完成披露会』
絵・文 村林由貴



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8月24日。18時。

完成披露会。

私は出来たてホヤホヤの絵を見つめながら、ドキドキして待っていた。

翌25日からは8日間限定の襖絵ツアーが始まる。

その前日である今日は、『いつもお世話になっている方々に、一番最初にご覧いただきたい。』という副住職と私の願いから、先生、職人さんなど関係者の皆さまと私の両親が、駆けつけてくださるのだ…。


「緊張して先に覗きに来てしまった!!」

と、退蔵院・松山大耕副住職と椿昇先生が一足先に。

「今さっき、ちゃんと完成できましたよ~~!!(笑)」

と、私。

本堂に向かうお二人を、後ろからひょこりと追いかけた。

副 「おぉ!…えぇわぁ~。ほんまに。… 落ち着きますなぁ。」

椿T 「おぉ!よしよし。えぇなぁ、完成したなぁ。ほんまようやった!!」

…と、喜んでくださって…、うれしい。笑顔がこぼれる。

ほかの皆さんの声も、玄関から聞こえてきた。

私は駆け寄った。

「こんばんは」と、それぞれに運んで下さる優しい笑顔と、"お疲れさま" や "おめでとう" のお声がけに心がぬくもりながら、"ありがたいな" "伝えたいな"って、思うほかなかった。



本堂に皆さんが揃い、壽聖院・松山侑弘住職がお寺のご説明をなさったあと、

「襖絵の感想を、まだ村林さんにも言っていなかったのですが…」

と続いた。

どきっとする私…。

壽「実は今朝早速、この本堂で大切な法要がありました。今までは真っ白だった襖に新しい絵が描かれた中、普段通りに集中できるのかどうか心配だったんですけれど…。実際は何の違和感もなく、落ち着いて行うことができました。こちらの要望にも応えて、質素なモチーフで素晴らしい絵を描いてくれたと思います。」

私は初めて聞いたご住職の感想に、じんとした。

そして、

壽「私は例えが下手ですが、書院の襖絵が "焼き肉"なら、本堂の襖絵は "おすいもの" のようです。そういった村林さんの表現の変化や幅も、楽しんでご覧頂けたらと思います。」とも。

すごくぴったりな例えとその流れに、私も皆さんも笑った。

どこのどんなお寺でも、その時のご住職の人柄や働きによって、お寺の呼吸も雰囲気も変化するのだと思う。

もし壽聖院の住職が別の方だったら、私の表現もまたきっと違っただろう。

今ある壽聖院は私にとって、日だまりのような温かさと・穏やかな静けさと・我にかえる時間とが流れる、そんな安らぎの場所に感じていた。

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次は私の番。

ご挨拶と共に、襖絵について話し始めた。

初めて語る、本堂への想い。
言葉にするにはきっと、まだまとまっていなかったり、つたなかったと思う。

それでも皆さん見守るような眼差しで、真剣に耳を傾けてくださっていた。


あとには雀や稲穂の練習画を広げ、喋ったり軽食を食べながら楽しい時間を過ごした。

椿T 「練習画の最初の方の雀は、アジの開きみたいやったもんなぁ(笑)」

村 「先生ひどーい!(笑) 確かにギラギラしてましたけど…!(笑)」

と、皆で練習画のロール紙を囲み、眺めて笑ったり。


襖絵制作で使用する様々な筆を調達していただいている、筆屋さんの『中里』・中里勝会長は

「線が変わったなぁ。びっくりした。筆もよう使てくれてるわ。」…と。

私はその嬉しいお言葉を聞きながら、
お会いする度に会長が

「筆が必要やったらいつでもゆうてや!こんなんがいいとかあったら、今ウチに無いもんは頑張ってつくるさかい。」

と、勇気づけて下さったことや、

「絵師と共に育つ道具屋でありたいと思っています。」

と、 中里文彦社長がおっしゃってくださった時のこと、初めて中里さんを訪ね、色んな種類の筆に触れ、試し書きをした時のことなど、

…様々な記憶が巡っていた。

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紙、硯、墨、筆、表具、胡粉、建具…。

それぞれを創り出す職人さん方、お寺を守る人、支える人、
描く人、伝える人、見つめる人、次へと繋ぐ人…。

沢山の方々が関わって、このプロジェクトは育ってゆく。

ひとりひとりとの忘れられないエピソードや感謝の想いは、ここには全然全然書ききれないけれど…。

私はそうやって色んな方の背中を見て励まされて、その熱い魂に追いつきたくて、心を決めて、描き続けて、

今日という日を迎えられたのだと思う。

そしてこの時この場所に流れていた空気も、共に過ごした時間も、
私も、ここを包む襖絵も、空間もぜんぶ、

人のぬくもりの中にいました。

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いつもご指導くださる椿昇先生と、完成披露会にて。


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8月1日。新しい筆を持って雨の中かけつけてくださった、中里文彦社長と。




明日も村林由貴・制作ノートから「襖絵ツアー」をアップします。
お楽しみに。

これまでの「退蔵院ふすま絵プロジェクト撮影レポート」はこちらから


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by yoshida-akihito | 2013-10-26 12:00 | 退蔵院ふすま絵プロジェクト


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